窯の炎の色

1280度くらいの窯の中の色 陶磁器を焼成する窯の炎の色は、赤っぽい色から白に近い色へと温度の上昇とともに変化していく。画像は1280度くらいの本日の窯の中の画像。とても長時間直視してられないくらいの光度だ。今でこそデジタル温度計で窯の中の様子がわかるが、昔は窯の中の色味や薪の燃える音などで判断していたらしい。
 江戸時代初期の名陶工・野々村仁清は晩年、長年の窯焚きがたたって失明したと京都で陶芸を勉強してた頃何かで読んだか聞いたかした記憶がある。念のためネットで検索したがそれらしいものが出てこなかった。あれは夢か幻か…。最近、なんとなく記憶など曖昧なまま流してしまうことが多くなってきた。

 仁清といえばちょうど25年前に会社を転職する際、以前の会社の有給休暇を消化するために旅行に出かけ金沢の石川県立美術館で仁清作の国宝『色絵雉子香炉』を観たことを思い出す。その後陶芸の道に進むことなぞ考えてもなかった頃だったが、作品に惹きこまれ長時間観賞した記憶がある。
 そのとき作品のかたわらのモニターディスプレイで詩人の宗左近が『色絵雉子香炉』を評論した数分間の映像が何度もリピート再生されていた。その中で『色絵雉子香炉』を端的に評した言葉を今でも覚えている。「曖昧の極みの完璧さ」。曖昧な私のアタマでは到底理解できない言葉だったからなのか、今でも耳にこびりついて離れない。いや、もしかしたらこの記憶自体も今となっては夢か幻かもしれない…。